二度目の更新

今日は二回も更新してしまった。休みだからと言ってやりすぎである。
ところで機動生命体の書き始めたばかりの頃の仮のタイトルは「久しぶりにSFでも書くか」だった。
我ながら気合いの入っていない事である。

で、本日二度目の更新。

アーカイブはこちら。
「機動生命体」

#0000,0010,0001
聞き間違いかどうか、私は決めあぐねいていた。ホンの数分前までは自分が生まれてきた事すら分かっていないような存在だった少年が、人語を話せるようになるなんて信じられなかった。私ですら、言葉を使えるようになるまで生まれてから1ヶ月はかかったのだ。肺と口腔と唇を複雑に動かして音程をコントロールするのは非常に難しい。人間以外に会話をする動物がいない事からも明らかだ。人間ですら言葉を完璧に話せるようになるまで4年は時間を要する。
私は前腕を開いて刃を押し出す。刃の切っ先を突きつけ、あらためて少年へ問う。
「助けてって、何から助けてほしい?」
答えない。少年は膝をついたまま反抗的な目つきでこちらを見ている。
「やっぱり、空耳か」
私は少年の右頬に軽く刃を突き刺す。少年は何も答えない。瞳に反抗的な色が濃くなっていく。私はその目をまっすぐ見返す。なぜか、その澄んだ瞳をみていると胸が苦しくなってくるのだ。

#0000,0010,0010
その時、鉄がひしゃげるような耳障りな音が響いた。音の方に目をやると、崩れかかったエレベータのドアの片方が、斜めに傾くように半分開いていた。
鉄のドアが、キューッと音を立て、曲がっていき、まるでガラス片のように砕ける。砕けた鉄片は床に落ちると共に、砂へと変わり、すでに崩壊しているエレベータを含めて、すべてが原子と素粒子へ還る。当然、私の表皮も先ほどから剥がされ続けている。
強力なプロジェリオン・フィールド。少年が発しているものとは別の力場だ。
エレベータの扉だったものを破壊しながら“ソイツ”は姿をあらわす。
正十二面体の体と、それを支える七本の足。まるで足が一本欠けた蜘蛛のようだ。
もう一体の、プロジェリア。
人類はプロジェリアを観測したことはない。プロジェリアは未知の存在だ。単体ではなく、群体である可能性は何度も議論されてきた。だが、実際に複数のプロジェリアを目の当たりにして、私は衝撃を受けた。
新たに現れたプロジェリアは、私の予想外の行動をとる。

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